【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

同族会社株式の生前贈与があったことを税務署に疎明するには?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、同族会社の株式を生前に贈与した場合、税務署にどうそれを疎明するか(贈与があったことは、一応確からしいと思ってもらうか)ということについて、お話します。


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贈与が認められなければ相続税対策は失敗になる

相続税対策のために同族会社の株式を贈与した場合、議事録や契約書など、その贈与があったことの証拠をきちんと残す必要があります。

もし、その贈与事実を税務署に否認されると、贈与は成立していないということになるので、その同族会社の株式は、贈与者のモノ、ということになります。

贈与者が亡くなった場合、その同族会社の株式は、相続財産を構成します。

相続税対策の失敗です。

手続上の書類は必要だがあればいいワケではない

贈与の証拠は必要ですが、書類があればよい、というワケではありません。

①書類がある→贈与があったことになる
ではなく、
②贈与があった→その贈与を成立させるために書類が必要→その書類が贈与の事実を疎明する証拠書類になる
ということです。

税務調査があった場合、「書類があればいいんでしょ」という感じで、無意識のうちに①の感覚で回答しないようにしましょう。

丁寧に経緯を説明しようという気持ちがあれば、②の感覚の回答になるハズです。

それでも、まだ油断してはいけません。

これは、同族会社の関係者間(親族間)の取引です。

身内の間でどうにでもできる(と思われてもしょうがない)取引です。

書類があるからと言って、税務署にそのまま信用されるとは限りません。

手続上の書類を後から作ったという疑念を持たれないようにする必要があります。

贈与に至った経緯や各手続きの過程をきちんと説明できるようにしておきましょう。

場合によっては、公証役場で確定日付を付与してもらう(その日にその書類があったことを証明する印を押印してもらう)ことも検討しましょう。

贈与税の申告と納付をすれば大丈夫?

贈与税の申告と納付をすれば、贈与があったことになるのでしょうか?

そんなことはありません。

贈与の事実がなくても、贈与税の申告と納付をすることはできるからです。

出典:TAINS(F0-3-218)
平19-06-26裁決(一部抜粋加工)
納税義務は各税法で定める課税要件を充足したときに、抽象的にかつ客観的に成立するとされ、贈与税の場合は、贈与による財産の取得の時に納税義務が成立する(通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第2項第5号)とされるが、この抽象的に成立した贈与税の納税義務は、納税者のする申告により納付すべき税額が確定(申告納税方式)し、具体的な債務となる。
このような申告事実と課税要件事実との関係については、「納税義務を負担するとして納税申告をしたならば、実体上の課税要件の充足を必要的前提要件とすることなく、その申告行為に租税債権関係に関する形成的効力が与えられ、税額の確定された具体的納税義務が成立するものと解せられる」(高松高裁昭和58年3月9日判決)と示されていることからすると、贈与税の申告は、贈与税額を具体的に確定させる効力は有するものの、それをもって必ずしも申告の前提となる課税要件の充足(贈与事実の存否)までも明らかにするものではないと解するのが相当である。そうすると、贈与事実の存否の判断に当たって、贈与税の申告及び納税の事実は贈与事実を認定する上での一つの証拠とは認められるものの、贈与事実の存否は、飽くまでも具体的な事実関係を総合勘案して判断すべきと解するのが相当である

想う相続税理士

抜かりなく対策しましょう。