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書面贈与の課税時期の規定を利用しても贈与税は時効にならない

相続税専門税理士の富山です。

今回は、「書面による贈与」による財産の取得時期についての取扱いを適用しても、贈与税の時効が成立しなかったケースについて、お話します。

贈与はいつ成立する?

贈与がいつあったかは重要です。

贈与があれば、贈与税が課税されるからです。

では、その贈与税の課税、つまり贈与税の納税義務が成立するのはいつかと言うと、国税通則法において次のように定められています。

国税通則法
第15条 納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定(一部抜粋)
2 納税義務は、次の各号に掲げる国税については、当該各号に定める時に成立する。
五 贈与税 贈与による財産の取得の時

また相続税法基本通達において、上記の「贈与による財産の取得の時」については、次のように定められています。

相続税法基本通達
1の3・1の4共-8 財産取得の時期の原則(一部抜粋)
相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。
(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時

「書面による贈与の場合には、契約の効力が発生した時」ということは、実際に贈与による財産の移転が行われていなくても、書面契約上で贈与があった時に、贈与税が課税される、ということになります。

贈与税の時効は何年?

贈与税の時効は、下記の国税通則法や相続税法の規定により、6年または7年ということになります。

国税通則法
第70条 国税の更正、決定等の期間制限(一部抜粋)
次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から5年(第2号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、3年)を経過した日以後においては、することができない。

相続税法
第36条 贈与税についての更正、決定等の期間制限の特則(一部抜粋)
税務署長は、贈与税について、国税通則法第70条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる更正若しくは決定又は賦課決定を当該各号に定める期限又は日から6年を経過する日まで、することができる。
4 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた贈与税についての更正決定若しくは賦課決定又は偽りその他不正の行為により国税通則法第2条第9号に規定する課税期間において生じた同条第6号ハに規定する純損失等の金額が過大にあるものとする同号に規定する納税申告書を提出していた場合における当該納税申告書に記載された当該純損失等の金額についての更正は、前3項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる更正決定又は賦課決定の区分に応じ、当該各号に定める期限又は日から7年を経過する日まで、することができる。

書面による契約書の作成によって贈与が成立するということになると、それから贈与税の時効が成立するまでの間に財産の移転をしないことにより税務署に見つからなければ、時効が成立した後に財産を移転しても税務署は贈与税を課税できない、ということになるハズですが、そうはならなかった、というケースがあります。

想う相続税理士秘書

参考 (平9.1.29裁決、裁決事例集No.53 381頁)国税不服審判所

契約書の作成だけでは贈与があったとは認められなかった!

このケースでは、昭和60年3月14日に不動産を贈与した旨の公正証書が作成され、その後8年以上経った平成5年12月13日に所有権移転登記をして不動産の名義を変更しています。

実際に不動産の名義変更があった時点では、もう贈与税の時効が成立しているため、課税できないはず、ということです。

しかし、結果的には平成5年12月13日に贈与があったものと認定されました。

本件公正証書は実態の伴わない形式的文書にすきず、本件公正証書によって贈与が成立したとは認めることはできない

贈与の成立した時期は、本件贈与が成立した権利関係を、第三者に対して主張するための法律要件が成就した時、すなわち、現実に所有権移転登記がされた時と認めるのが相当である

想う相続税理士

租税回避行為と認定された場合には、規定通りの取扱いにならないことがありますので、ご注意を。