【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続税の申告書に記載されていない債務に注意

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続における保証債務の引き継ぎについて、お話します。


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相続税は正味の財産に対して課税される

相続税の計算においては、「遺産に係る基礎控除額」という「相続税の非課税枠」があり、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
で計算されます。

法定相続人の数が3人であれば、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
ですから、この場合、亡くなった方の土地や預貯金などの財産が4,800万円を超えた部分に対して相続税を計算するのかというと、実はそうではありません。

土地や預貯金など(いわゆる「プラスの財産」)の金額から、亡くなった方の「債務」「葬式費用」(いわゆる「マイナスの財産」)の金額を「控除」して計算することができます(他にも贈与財産を逆に加算したりして「正味の財産」の金額を計算します)。

この「控除」することを「債務控除」と言います。

債務だったら何でも債務控除できるワケではない

亡くなった方の「債務」は何でも控除できるかというと、実はそうではありません。

下記の要件を満たす必要があります。

相続税法(一部抜粋)
第13条 債務控除
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの
第14条
前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。

保証債務はどうなる?

AさんがBさんからお金を借りた際、Cさんがその借金の保証人になっていたとします。

AさんがBさんに借金を返せない場合、Cさんがその借金を返済しなければなりません。

民法(一部抜粋)
第五款 保証債務
第一目 総則
(保証人の責任等)
第四百四十六条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

この保証人の「返済しなければならない義務」「債務」「保証債務」と言います。

亡くなった方がこのCさんの立場、つまり保証人だった場合、亡くなった方には保証債務があることになります。

では、この保証債務は上記でお話した「債務」に該当し、「債務控除」の対象になるのでしょうか?

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
14-3 保証債務及び連帯債務
保証債務及び連帯債務については、次に掲げるところにより取り扱うものとする。
(1) 保証債務については、控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務者の債務として控除すること。

保証債務は原則として債務控除の対象にはなりません。

債務控除の対象となるのは、上記通達のただし書きにあるように、債務者(上記のAさん)が本当に借金を返済できない場合のみです。

ということは、亡くなった方にこのような保証債務があっても、相続税の申告において債務控除できないため、相続税の申告書には記載されません。

(亡くなった方の財産内容に詳しい)他の相続人が作成した相続税の申告書の「債務の明細」の部分に債務の記載がなかったとしても、亡くなった方に保証債務がある場合があるのです。

亡くなった方に保証債務があると、それはその相続人に引き継がれます。

相続の時にはAさんに資力(財力)があったため、債務控除の対象にはならなかったけれども、その後、Aさんが本当に借金を返せなくなった場合、保証債務を相続した各相続人は、保証人としてAさんの借金を肩代わりして返済することになります。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

相続放棄や免責的債務引受等の手続きをしない限り、その「保証債務は相続人全員が各法定相続分に応じて引き継ぐ」ことになりますので、ご注意を。