【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

祖父母から孫への保険料贈与プランの注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、「保険料贈与プラン」という相続税対策の注意点について、お話します。

想う相続税理士

保険料贈与プランについては、下記の記事をご覧ください。
保険料贈与プランとはどんな相続税対策?

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贈与がきちんと成立しているか

上記の記事では、親から子への贈与を前提としてお話しましたが、今回は、祖父母から孫への贈与の場合、ということでお話します。

想う相続税理士秘書

保険料贈与プランでは、毎年、保険料相当額の現金を贈与します。

将来の相続財産を減らすためですから、相続時精算課税を選択せず、暦年課税で贈与します。

贈与が成立するためには、贈与者(祖父母)が、現金を無償で孫に渡す意思を表示し、受贈者(孫)が、それを受諾する必要があります。

祖父母の口座から孫の口座にお金が動いただけでは、贈与になりません。

親が勝手に祖父母の口座と孫の口座の間で資金異動してもダメです。

贈与者(祖父母)の注意点

祖父母がご高齢になったりして、認知症などを患ったりして、意思能力が無い状態だと、贈与契約(=法律行為)は成立しません。

民法(一部抜粋)
第二節 意思能力
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

換言すれば、最初の頃は贈与ができても、意思能力が亡くなった後は、贈与ができなくなります。

そうなると、保険料の支払いができなくなってしまう可能性があります。

受贈者(孫)の注意点

孫が未成年者(18歳未満)だと、祖父母と孫だけでは贈与契約(=法律行為)が成立しません。

民法(一部抜粋)
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

法定代理人、つまり、原則として親権者であるご両親(父母)の同意が必要です。

民法(一部抜粋)
(親権者)
第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

出典:TAINS(F0-3-218)
名裁(諸)平18第74号
平成19年6月26日
請求人は、あえて贈与契約書を作成しないという贈与の実態は、親子の関係では、社会通念上、むしろ一般的ではないかとも考えられる旨主張するが、本件は、親権者と未成年の子との間の契約で、親権者自身が贈与者と受贈者の立場を兼ねていることから、対外的には贈与契約の成立が非常に分かりづらいものとなることは容易に認識できることであり、かえって、このような場合には、将来、贈与契約の成立について疑義が生じないよう契約書を作成するのがむしろ自然ではないかと考えられる

上記の情報を総括すると、親権者2人(父母)の連名もある贈与契約書を作成すべき、ということになります。

他の相続人の反感を買う可能性がある

孫に贈与する場合、例えば、祖父が孫a(長男Aの子)にだけ贈与すると、相続の時に二男Bの反感を買う可能性があります。

孫a(長男Aの子)が財産をもらうということは、実質的には、長男Aがもらっているようなところがある(長男A一家でもらっているため)からです(次男Bはもらっていないのに)。

金額設定を誤ると老後の生活資金が枯渇する

相続税対策に一生懸命になり過ぎて、無理な贈与をするのは禁物です。

親(祖父母の子供)が、節税ありきで話を進めないようにしましょう。

祖父母のお金は、あくまでも、祖父母のモノです。

思わぬ生前贈与加算に注意する

通常、孫は相続人ではないため、相続で財産を取得しません。

したがって、孫に生前贈与をしても、その贈与財産は相続税の課税対象にはなりません。

相続で財産を取得すると、相続開始前3年以内の贈与財産は、相続税の課税対象になります(「生前贈与加算」と言います)。

そういう意味では、保険料贈与プランは、子供ではなく、孫を受贈者とした方が効果があります。

ただし、その孫が、保険料を亡くなった方が負担した死亡保険金を受け取った場合、孫は相続で財産を取得したモノとみなされるため、保険料贈与プランの贈与も含めた相続開始前3年以内の贈与財産に、相続税が課税されることになります。

贈与額を年間110万円以下に設定して、贈与税を非課税にしたつもりでも、相続税が課税されてしまうのです。

想う相続税理士

通常、孫は相続人ではないため、生命保険金を受け取っても、「500万円×法定相続人の数」で計算される生命保険金の非課税金額が適用されません。

さらに、相続税が2割増しで計算されますので、ご注意を。