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相続時精算課税を適用する際に気をつけたい「みなし贈与」

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続時精算課税選択上の注意点について、お話します。

同じ基礎控除でも性質が違う

令和5年度税制改正により、令和6年分以後の相続時精算課税贈与については、年間110万円の基礎控除(非課税枠)が創設されました。

暦年課税にも同様の基礎控除(年間110万円)がありますが、暦年課税贈与だと、受贈者(贈与により財産を「もらう人」)が贈与者(「あげる人」)の相続の際に財産を取得した場合、その贈与が相続開始前3年(税制改正により~7年)以内に該当すると、非課税枠を超えていようがなかろうが、その贈与財産がすべて相続税の課税対象になります。

例えば、相続で財産を取得した方が、その亡くなった方から前の年に暦年課税贈与により110万円の財産を取得していた場合、その110万円の財産には(贈与税は非課税枠内なのでかかりませんが)相続税がかかります。

それに対して、相続時精算課税贈与の非課税枠部分については、相続税がかかりません。

これまた例えば、相続で財産を取得した方が、その亡くなった方から前の年に相続時精算課税贈与により110万円の財産を取得していた場合、その110万円の財産には(贈与税は非課税枠内なのでかからず)相続税もかかりません。

知らないうちに贈与が発生することがある

「相続税も贈与税もかからない非課税枠がある」となると、相続時精算課税を選択した方が良いように思われるかもしれません。

しかし、ここでご注意いただきたいモノがあります。

それは「みなし贈与」です。

通常の贈与は、あげる人・もらう人の意思表示と承諾が必要です。

民法(一部抜粋)
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

しかし税務上は、これ(意思表示や承諾)がなくても「経済的利益の移転」があれば、贈与があったモノとみなして贈与税の課税対象と考えます。

「安く譲ってもらう」「借金をナシにしてもらう」というような行為は、安く買えた分だけトクしていますし、返さなくてよくなった分だけトクしています(経済的利益を受けています)。

また、例えば同族会社の株式を子が所有している場合に、親がその会社に対する貸付金を放棄すると、その同族会社の株式の評価額が高くなることがあります。

会社の借入金(親から見た貸付金は会社から見ると借入金です)が減って財務内容が良くなり、放棄してもらったことにより返さなくてよくなったトクが「債務免除益」として計上されるため、利益が増えるからです。

この場合、親の行為のお陰で子の所有する株式の評価額が高くなっていますから、この高くなった分は、親から子への贈与に該当します(これも「みなし贈与」です)。

過去のみなし贈与を税務署に指摘された場合

上記のような親から子への「株式の評価額の上昇分のみなし贈与」があった場合や、「安く譲ってもらう」「借金をナシにしてもらう」という「みなし贈与」が同じく親子間で発生した場合、子がその親からの贈与について相続時精算課税を選択していて、そのみなし贈与が選択した年以後に行われたときは、そのみなし贈与の金額は父の相続税の課税対象となります。

相続時精算課税を選択していない場合(暦年課税が適用される場合)には、時効が成立していれば、贈与税はかかりません(相続税もかかりません)。

想う相続税理士

相続発生後、過去の思わぬ「みなし贈与」を税務署に指摘された場合、相続時精算課税を選択していたかどうかで結果が全く変わる場合がありますので、ご注意を。