【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

遺言で債務を負担させる場合の注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、遺言により相続人以外の方に債務を負担させる場合の注意点について、お話します。


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債務があるとその分だけ相続税が安くなる

相続税の計算は、土地や預貯金などのプラスの財産だけに着目するのではなく、債務や葬式費用も考慮して計算されます。

亡くなった方に債務があれば、相続人に引き継がれます。

相続人は、プラスの財産を取得するだけではなく、マイナスの財産も引き継ぐのです。

5,000万円の預金を相続しても、3,000万円の借入金を引き継ぐのであれば、正味では2,000万円(5,000万円△3,000万円)の財産を取得することになるワケですから、2,000万円に対する相続税を納めることになります。

この債務や葬式費用をプラスの財産から控除することを、「債務控除」といいます。

財産を取得しても債務控除できない場合がある

債務控除については、相続税法第13条に次のように規定されています。

この出だしの対象者に注目です。

相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用

括弧書きのところに着目すると、「包括遺贈」という言葉があります。

これは、財産を指定せず「割合(例えば『財産の1/2』など。100%も含む)を指定」して与えることを言います。

包括遺贈により財産を取得する方を、「包括受遺者」といいますが、包括受遺者は相続人と同じ扱いになります。

民法
(包括受遺者の権利義務)
第九百九十条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

この包括遺贈に対して、「特定遺贈」というものがあります。

特定遺贈とは、「財産を指定」して与えることを言います。

括弧書きの「及び」の後を見ると、「~相続人に対する遺贈に限る」とありますので、相続人が遺言により財産を取得した場合には、この債務控除の対象となるのですが、相続人以外の方で特定遺贈により財産を取得した方については、この債務控除の対象外、ということになります。

負担付遺贈の場合には?

同じ債務の引継ぎがある場合でも、負担付遺贈(一定の義務(債務)を負担させる条件で財産を遺言で与える)の場合には、様相が異なってきます。

相続税法基本通達
11の2-7 負担付遺贈があった場合の課税価格の計算
負担付遺贈により取得した財産の価額は、負担がないものとした場合における当該財産の価額から当該負担額(当該遺贈のあった時において確実と認められる金額に限る。)を控除した価額によるものとする。

債務控除をするのではなく、ダイレクトに財産の金額から債務を控除します。

控除後の金額が、財産の金額、という取扱いです。

ですから、債務控除ができなくても、債務の分だけ相続税が安くなります。

ただし、この場合、負担付遺贈により、亡くなった方は、債務を返済しなくてよくなるワケですから、その債務の金額だけお金をもらうのと同じことになります。

財産を渡して、お金をもらった(要は「財産を売った」)、ということで、この負担付遺贈は、譲渡所得における資産の譲渡に該当し、亡くなった方の準確定申告において、譲渡所得として申告する必要があります。

当然、この準確定申告に係る所得税は、債務控除の対象となり得ます。

想う相続税理士

相続人以外の方に特定遺贈で財産を取得させる場合に、他の相続人などとのバランスをとろうとして債務を負担させると、思わぬ税負担が生じる場合がありますので、ご注意を。
この譲渡所得の考え方は、遺産分割協議書による遺産分割でも生じ得ます。

代償分割をした場合に、代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合です。

簡単に言うと、代償分割金を払う代わりに自分の財産を相手(他の相続人)に渡すワケですから、「財産を売って」そのお金を渡している、と考えられますので、この「財産を売って」の部分が資産を譲渡したことになり、所得税が課税されます。

想う相続税理士秘書