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配偶者居住権ってどうやって計算するの?

【今回の相談】

配偶者居住権ってどうやって計算するの?

自宅を相続した長男


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配偶者居住権を相続すると、敷地の権利も併せて相続税の課税の対象になる

配偶者居住権がある場合、その「配偶者居住権」と、その地べたの「敷地利用権」が、配偶者が取得した相続財産として課税の対象になる

自宅の土地建物を長男が相続したのなら、「配偶者の相続分+長男の相続分=自宅全体の相続分」になる

自宅建物の相続税評価額(全体・100%)(固定資産税評価額×1.0)=配偶者居住権(ここが配偶者相続分)『(配偶者居住権により使用制限を受ける)建物の所有権=A』

自宅敷地の相続税評価額(全体・100%)(路線価や固定資産税評価額等を基に計算)敷地利用権(ここが配偶者相続分)『(建物の配偶者居住権により使用制限を受ける)土地の所有権=B』

夫が亡くなって、妻が配偶者居住権を取得し、自宅の土地建物の所有権を長男が取得したと仮定すると、長男が取得した相続財産が上記の『A』+『B』妻の相続財産は、建物・土地それぞれ、全体から長男相続分をマイナスして計算する

自宅全体の相続分から、長男の相続分を差し引いて、配偶者の相続分である「配偶者居住権」「敷地利用権」を計算する。ダイレクトに「配偶者居住権」を計算できる訳ではない

想う相続税理士

ということで、まず長男の相続分がどのように計算されるか、見ていきましょう!

長男相続分の建物『A』=自宅建物の相続税評価額(全体・100%)(固定資産税評価額×1.0)×イ×ロ

自宅建物については、通常の評価額に、「イ」と「ロ」という2つの割合を掛けて長男の相続分を計算します。

では、その「イ」と「ロ」は一体どういうものなのでしょうか?

想う相続税理士

今は配偶者が使っているけど、配偶者が亡くなって、建物を自分で自由に使えるようになるのが、早ければ早いだけ、長男にとっては、その建物の財産価値は高い→「早く使える」を割合に表したものが「イ」、早く使えれば使えるだけ「イ」の割合は高くなる

イ=「建物が使える残りの年数(=残存耐用年数)「配偶者の平均余命(配偶者が亡くなれば制限を受けなくなり、自宅が完全に自分のモノになる、それが残り何年か)(=残存年数)の関係割合

イ=(残存耐用年数△残存年数)/残存耐用年数

残存耐用年数=法定耐用年数×1.5△経過年数

想う相続税理士

「法定耐用年数×1.5というのは、「法定耐用年数」が事業用の建物を前提に考えられた「建物のもつ年数」だから。

「居住用(自宅)なら、工場とか事務所みたいに、手荒に使わないし、いろいろな人が入ってきたりしないので、その分、事業用よりもつでしょ」ということで1.5倍で考えます。

残存年数(平均余命)は、厚生労働省の「簡易生命表」というものを基に、男女別にその年齢で判定(遺産分割協議書等によりそれよりも短い年数を設定することも可)

(1)「あと10年もつ建物に余命8年の配偶者がいる場合」=(イが0.2になる)
よりも、
(2)「あと10年もつ建物に余命1年の配偶者がいる場合」=(イが0.9になる)
の方が、
掛ける割合「イ」が大きいので評価が高くなる。

(2)の方が(1)よりも早く自宅が完全に自分のモノになるから、その年数だけで考えると、財産価値が高いと考える、だから「イ」の割合が高まることにより、相続税評価額も高くなる、という仕組み

想う相続税理士

長男にとって、将来(配偶者が亡くなって)自分のモノになる自宅建物は、現在ではいくらの価値?という観点から使用されるのが、「ロ」=「残存年数に応じた民法の法定利率による複利現価率」

15年後に手に入る100万円って、今の価値はいくらでしょうか?

想う相続税理士

それは100万円じゃないよね、今100万円だったら、利息が付いて、15年後はもっと大きな金額になるから。
年利3%とすると、642,000円持っていれば、15年後に100万円ですよ。

想う相続税理士

642,000円×1.03×1.03・・・(と15回掛ける)=約100万円。
自宅建物も同じように考えるんですよね。

想う相続税理士

残存年数(平均余命、例えば15年)が経過すれば、自宅が完全に自分のモノになる、でも今は、完全に自分のモノではない。だから価値としては、「×64.2%」する。
642,000円/100万円=0.642(64.2%)ですね。

想う相続税理士

残存年数によって、年3%で計算されたこの割合(「残存年数に応じた民法の法定利率による複利現価率」)を「ロ」に使用するんだ。
「『残存年数に応じた民法の法定利率による複利現価率』を採用すること」「その基準となる利率が現時点では3%であること」は、国が決めたことだから、あまり深く考えないでください。

利率3%を使って、将来の金額を現在の金額に調整計算する、っていうところがポイントです。

自宅敷地は「ロ」のみで計算。土地には「耐用年数」がありませんから

長男相続分の土地『B』=自宅敷地の相続税評価額(全体・100%)(路線価や固定資産税評価額等を基に計算)×ロ

「ロ」は建物の「ロ」と同じ(現在の金額に調整計算

配偶者居住権と敷地利用権が異常に高額になる場合に注意

建物の「イ」に出てくる「残存耐用年数=法定耐用年数×1.5△経過年数」「残存耐用年数△残存年数」がマイナスになることがある

「古い建物で、30年(20年×1.5)もつと計算される建物で、もう35年経過している場合」(計算上、古過ぎて価値がない)「30年もつと計算される建物で、10年しかたっていないけど(残り20年使える)、配偶者が25年生きる(平均余命25年)場合」(計算上、自分のモノになった時点では、古過ぎて価値がない)など

この場合に、長男相続分の建物『A』は計算上0になる

つまり、自宅建物の相続税評価額全額(全体・100%)に対し、配偶者が相続税の課税を受ける(100%配偶者居住権)