【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

非課税贈与と相続税特例の損得勘定

相続税専門税理士の富山です。

今回は、生前に非課税の贈与を受けた方がトクなのか、それとも、相続で財産を取得して相続税申告における特例の適用を受けた方がトクなのか、ということについて、お話します。


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贈与税の配偶者控除

別名「おしどり贈与」

「贈与税の配偶者控除」というモノがあります。

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、ご自宅、または、ご自宅の購入資金を贈与した場合に、2,000万円の非課税枠が適用できる、という制度です。

生前贈与加算の対象外

例として夫が妻に生前贈与をした後、その夫が亡くなり、妻がその夫の相続により財産を取得した場合、その生前贈与をした日が相続開始前3年以内(令和5年度税制改正により年数が伸びます)に該当すると、その生前贈与財産を相続財産に加算して、相続税を計算することになります(これを「生前贈与加算」と言います)。

「相続税がかかりそうだ!じゃあ生前贈与しよう!」と考えて贈与をしても、この生前贈与加算に引っかかると、相続税が課税されるのです。

しかし、この贈与税の配偶者控除を適用した部分については、生前贈与加算の対象外です。

贈与税は非課税で、相続税がかかることもありません。

特別受益に該当しない

民法(一部抜粋)
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

法務省HP(一部抜粋)
婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については、原則として、計算上遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱わなくてよいこととする。

贈与税が非課税になったとしても、遺産の前渡し(特別受益)だ、と言われると、その分、相続の際に取得する財産が減ってしまいます。

しかし、上記の取扱いに該当すれば、遺産の前渡し扱いはされません。

住宅取得等資金の非課税贈与

令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭(住宅取得等資金)の贈与を受けた場合において、一定の要件を満たすときは、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円まで贈与税が非課税となります。

こちらも、上記の贈与税の配偶者控除と同じように、生前贈与加算の対象外となります。

想う相続税理士秘書

配偶者は相続税が(ほとんど)かからない

配偶者の方が相続により取得した財産については、

  1. 財産のうち配偶者の法定相続分(お子さんがいる場合には1/2)相当額
  2. 1億6,000万円
のいずれか多い金額まで相続税が無税になります(この制度を「配偶者の税額軽減」と言います)。

「最低でも1億6,000万円」の非課税枠があるのです。

また、亡くなった方のご自宅の敷地については、一定の要件を満たすと、「特定居住用宅地等」として、相続税の課税価格を330㎡までの部分につき80%減額することができる(「小規模宅地等の特例」と言います)のですが、配偶者が取得した場合には、所有継続要件や居住継続要件が課されず、特例の適用が認められます。

つまり、配偶者の場合には、(生前贈与でもらわなくても)相続でもらっても税金がかかりにくい(かからない方が多い)のです。

家なき子特例が使えなくなる(ことが多い)

上記でお話した亡くなった方のご自宅の敷地に係る小規模宅地等の特例の件ですが、「家なき子特例」と呼ばれる適用パターンもあり、これは、亡くなった方に配偶者も法定相続人である同居親族もいらっしゃらなかった場合、一定の賃貸住まいをしている相続人が、その亡くなった方のご自宅の敷地を取得した場合、上記と同様、相続税の課税価格を330㎡までの部分につき80%減額することができます。

所有継続要件は課せられますが、居住継続要件は課されないため、相続したからといって、自分で住まなくても大丈夫です。

しかし、住宅取得等資金の非課税贈与の適用を受けて、マイホームをお持ちになっていると、この特例が適用できなくなることが多くなります。

想う相続税理士

非課税贈与を実行する前に、万が一の場合の相続税の申告(特に特例適用)がどうなるか、予想・検討しましょう。