【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続の放棄があったら非課税枠はどうなる?

相続税専門税理士の富山です。

相続を放棄しても生命保険金を受け取ることができる? の記事では、相続を放棄した相続人が、生命保険金の受取人になっている場合に、「相続を放棄しても生命保険金を受け取ることができる」ことや、相続でもらっていないのに「相続税がかかるワケ」について、お話しました。

今回は、その話をさらに深掘りしていきたいと思います。


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1人600万円の非課税枠はどうなる?

相続税を計算する場合には、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
の非課税枠があります(「遺産に係る基礎控除額」といいます)。

例えば、法定相続人が3人の場合、
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
となります。

この3人のうちの1人が相続を放棄した場合、この非課税枠はどうなるでしょうか?

相続を放棄した人がいても、この非課税枠は変わりません。

相続税法
第15条 遺産に係る基礎控除
相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第19条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第18条まで及び第19条の2において同じ。)の合計額から、3,000万円と600万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第5編第2章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。

1人500万円の非課税枠はどうなる?

相続を放棄しても生命保険金を受け取ることができる? の記事では、相続を放棄した相続人が、生命保険金の受取人になっている場合についてお話しました。

この生命保険金については、先ほどお話した非課税枠(「遺産に係る基礎控除額」)とは別に、
500万円×法定相続人の数
の非課税枠があります(「保険金の非課税限度額」といいます)。

例えば、法定相続人が3人の場合、
500万円×3人=1,500万円
となります。

この3人のうちの1人が相続を放棄した場合、この非課税枠はどうなるでしょうか?

この非課税枠についても、相続を放棄した人がいても変わりません。

相続税法
第12条 相続税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
(中略)
五 相続人の取得した第3条第1項第1号に掲げる保険金(前号に掲げるものを除く。以下この号において同じ。)については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分
イ 第3条第1項第1号の被相続人のすべての相続人が取得した同号に掲げる保険金の合計額が500万円に当該被相続人の第15条第2項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「保険金の非課税限度額」という。)以下である場合当該相続人の取得した保険金の金額
ロ イに規定する合計額が当該保険金の非課税限度額を超える場合 当該保険金の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額

↑この「第15条第2項」は、「遺産に係る基礎控除額」のところでご紹介した条文です。

つまり、同じように「放棄しても変わらない」ということです。

想う相続税理士秘書

でも放棄したその相続人には非課税枠が適用されない!

「非課税枠」は変わらないのですが、その放棄した相続人が受け取った生命保険金については、「非課税枠」は使えません。

相続税法
第12条 相続税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
(中略)
五 相続人の取得した第3条第1項第1号に掲げる保険金(以下略)

非課税になるのは、「相続人」が取得した保険金なのです。

想う相続税理士秘書

相続税法
第3条 相続又は遺贈により取得したものとみなす場合
次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。第15条、第16条、第19条の2第1項、第19条の3第1項、第19条の4第1項及び第63条の場合並びに「第15条第2項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
一 生命保険契約の保険金
(一部省略)

相続を放棄した者は「相続人ではない」という取扱いのため、非課税にならないのです。

想う相続税理士秘書

つまり、「全額課税」となります。

他の(相続を放棄していない)相続人については、通常どおり使えます。

想う相続税理士

他の相続人は、相続を放棄した相続人が使えない「非課税枠」を追加で使える感じになるため、相続税がさらに安くなります。