【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続開始年分贈与に係る贈与税の配偶者控除の適用に注意!

相続税専門税理士の富山です。

今回は、夫婦間で居住用不動産の贈与をし、贈与税の配偶者控除の適用を受けようとしていたら、その贈与の年に贈与者が亡くなってしまった場合の相続税・贈与税の課税関係について、お話します。


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贈与税の配偶者控除とは?

「贈与税の配偶者控除」という贈与税の特例があります。

「おしどり贈与」なんて言われる場合もあります。

婚姻期間が20年以上の夫婦間において、「居住用不動産」または「居住用不動産を取得するための金銭」の贈与をした場合、通常の110万円の非課税枠の他に、最高2,000万円の非課税枠が認められる、というモノです。

贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた方が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであることも要件となります。

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一定の書類を添付して、贈与税の申告をすることも、この特例の適用を受けるための要件となります。

生前贈与加算の対象外!

相続で財産を取得した方が、亡くなった方から3年以内に贈与により取得した財産は、相続税の課税対象となります(生前贈与財産を通常の相続財産に加算して相続税を計算するため、「生前贈与加算」なんて言われます)。

そうすると、「贈与税の配偶者控除を適用することにより2,000万円の非課税枠を活用して贈与をしても、亡くなる前3年以内に引っかかると、贈与税がかからないけれども、相続税がかかっちゃうのか!」と思われるかもしれませんが、この贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産(「特定贈与財産」と言います)については、生前贈与加算の対象外です。

相続開始年分の贈与は贈与税の特例が受けられない?

上記で、「相続で財産を取得した方が、亡くなった方から3年以内に贈与により財産を取得した場合」についての生前贈与加算のお話をしましたが、この「3年以内」という期間をもっと短くして、「相続開始の年において」の贈与に限定すると、また別の話が出てきます。

相続税法(一部抜粋)
第21条の2 贈与税の課税価格
相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始の年において当該相続に係る被相続人から受けた贈与により取得した財産の価額で第19条の規定により相続税の課税価格に加算されるものは、前3項の規定にかかわらず、贈与税の課税価格に算入しない

「贈与税の課税価格に算入しない」ということは、贈与税がかからない、ということです。

そうすると、「(そもそも贈与税がかからないんだから)贈与税の配偶者控除の適用は受けられず、丸々相続税がかかっちゃうのか!」と思われるかもしれませんが、実はそうはなりません。

相続税法基本通達(一部抜粋)
19-9 相続開始の年の特定贈与財産に対する贈与税の課税
相続の開始の年に当該相続に係る被相続人から贈与により取得した居住用不動産又は金銭で特定贈与財産に該当するものについては、法第21条の2第4項の規定の適用がなく、その財産の価額が相続の開始の日の属する年分の贈与税の課税価格に算入されるのであるから留意する。

どんでん返しで贈与税の課税対象となるのです。

それにより、贈与税の配偶者控除の適用が可能となります。

つまり、相続開始年分の贈与だとしても、贈与税の申告をする必要がある、ということです。

特定贈与財産は奥が深い

相続開始年分の贈与については、特定贈与財産は次のように定められています。

相続税法(一部抜粋)
第19条 相続開始前3年以内に贈与があつた場合の相続税額
2 前項に規定する特定贈与財産とは、
二 当該贈与が当該相続の開始の年においてされた場合で、当該被相続人の配偶者が当該被相続人からの贈与について既に第21条の6第1項の規定の適用を受けた者でないとき(政令で定める場合に限る。)。 同項の規定の適用があるものとした場合に、同項の規定により控除されることとなる金額に相当する部分

「適用があるものとした場合に控除されることとなる金額」と規定されているため、実際には控除されなくても(贈与税の配偶者控除の適用ができなくても)、相続税の申告において一定の手続きを行うことにより、特定贈与財産となります。

相続税法基本通達(一部抜粋)
19-9 相続開始の年の特定贈与財産に対する贈与税の課税
(注)法第19条第2項第2号の規定により特定贈与財産に該当することとなった居住用不動産又は金銭の価額については、贈与税の配偶者控除の適用がない場合であっても、相続税の課税価格に加算されないのであるから留意する。

相続税の課税価格に加算されない

贈与税の課税対象になる

でも特例の適用が受けられない

ということになってしまいます。

居住要件を満たさないために特例の適用が受けられない、というような場合には、あえて特定贈与財産として取扱わない、ということも検討すべきでしょう。

しかし、先に相続税の申告期限が到来するパターンも考えられるため、そんな対応ができない、という場合も考えられますので、ご注意を。

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2,000万円を超える部分については、たとえ「居住用不動産を取得するための金銭」に該当したとしても、金額基準で特定贈与財産には該当しないことになりますから、通常の贈与扱い(つまり、「生前贈与加算の対象で、相続開始年分贈与であれば贈与税の課税対象外」)となりますので、ご注意を。