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改正前(現時点)の相続時精算課税と債務控除・3年以内贈与加算・贈与税還付の関係

相続税専門税理士の富山です。

今回は、来年から改正される相続時精算課税制度について、現時点での債務控除や3年以内贈与加算、贈与税還付との関係について、お話します。

想う相続税理士

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債務控除は相続で財産を取得したか等によって対象が変わる

相続税を計算する場合、亡くなった方が残した「債務」及び「葬式費用」を、プラスの財産から差し引くことができます(差し引くことにより、相続税の課税価格が減りますので、相続税が安くなります)。

これを「債務控除」と言います。

相続時精算課税適用者の控除対象の対象は次のとおりです(その方の属性により控除対象が変わります)。

(1)相続で財産を取得した相続時精算課税適用者
①無制限納税義務者・・・下記A
②制限納税義務者・・・下記B

(2)相続で財産を取得しない相続時精算課税適用者
①相続開始時に法施行地に住所を有する者・・・下記A
②相続開始時に法施行地に住所を有しない者・・・下記B

A:相続税法第13条第1項
次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用

B:相続税法第13条第2項
次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額
一 その財産に係る公租公課
二 その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
三 前2号に掲げる債務を除くほか、その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
四 その財産に関する贈与の義務
五 前各号に掲げる債務を除くほか、被相続人が死亡の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有していた場合においては、当該営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務

この債務控除は、相続人及び包括受遺者のみが適用できるものです。

それは、上記の相続時精算課税適用者についても同様ですので、ご注意を。

想う相続税理士秘書

相続開始前3年以内に相続時精算課税を選択した場合

改正前(現時点)の相続時精算課税適用財産の相続時の取扱い

上記の記事でもお話したとおり、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産は、必ず相続税の課税対象になります(相続税の課税価格に加算されます)。

似たようなもので、亡くなった方から相続開始前3年以内に暦年課税による贈与で取得した財産も、相続税の課税価格に加算される場合があります。

「加算される場合がある」というのは、加算されない場合もあるのです。

加算されるのは、その受贈者が「相続で財産を取得した場合」です。

ですから、例えば長男Aさんが亡くなった方(父Bさん)から相続開始2年前にC定期預金100万円をもらった場合、父Bさんの相続の際に長男Aさんが財産を取得したら、C定期預金に相続税がかかります(相続税の課税価格に加算されます)が、長男Aさんが財産を取得しなければ、C定期預金には相続税がかかりません(相続税の課税価格に加算されません)。

ただし、父Bさんの相続の際に長男Aさんが財産を取得しなくても、相続開始1年前に相続時精算課税を選択し、その適用を受けて財産の贈与を受けた場合には、その暦年課税による贈与財産(C定期預金)も、相続税の課税価格に加算され、相続税がかかることになります。

相続時精算課税に係る贈与税は還付される場合がある

上記において、「亡くなった方から相続開始前3年以内に暦年課税による贈与で取得した財産」には相続税がかかる場合がある、とお話しましたが、相続税がかかる場合、もし、その贈与の時に贈与税がかかっていたら、同じ財産に贈与税と相続税が課税されることになります。

そうなると「二重課税」になってしまうので、相続税の金額からその贈与税の金額を控除します。

この場合、相続税の金額よりも控除額の方が大きく、控除しきれないとしても(例えば、相続税が100万円、適用できる贈与税額控除が150万円のような場合)、払った贈与税は還付されません(差額の50万円は還付されません)。

それに対して、相続時精算課税に係る贈与税は還付されます。

相続税法(一部抜粋加工)
第33条の2 相続時精算課税に係る贈与税額の還付
税務署長は、第21条の15から第21条の18までの規定により相続税額から控除される第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産に係る贈与税の税額に相当する金額がある場合において、当該金額を当該相続税額から控除してもなお控除しきれなかつた金額があるときは、第27条第3項の申告書に記載されたその控除しきれなかつた金額に相当する税額を還付する

想う相続税理士

還付を受けるためには、相続税の申告が必要です。