相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続対策について、お話します。
相続対策には3つの柱がある
相続対策は、主に
- 遺産分割対策(遺産分け対策)
- 納税資金対策(納税資金準備対策)
- 節税対策(相続税の節税対策)
が3つの大きな柱になります。
この中で、一番取り組みやすいのは、「節税対策」です。
財産の構成を変えたり、生前贈与を実行することで、相続税の金額は確かに変わります。
令和5年度税制改正により、相続時精算課税による贈与に新たに110万円の基礎控除額(非課税枠)が創設されました。
この非課税枠は、贈与財産を相続税の計算に組み込む「生前贈与加算」の対象に絶対にならない、という仕組みになっています。
これを活用して子や孫などに贈与することにより、贈与税も相続税もかからない財産の移転が可能になります。
遺産分けができないと納税資金の準備も節税もできない
一番取り組みやすいこの「節税対策」を先に考えて、着手しやすい生前贈与を先に実行することで、結果的に遺産分けががまとまらない、なんてことになると大変です。
部分的には生前贈与で節税ができたとしても、生前贈与をしてもらえなかった他の相続人がそれを知ることにより、遺産分けが(うまく)まとまらなかったりすると、相続税の特例が受けられず、結局、高い相続税を納めることになったり、相続財産を納税資金に充てられない、というようなことが起こり得ます。
生前贈与をしやすいのは現預金だけど・・・
相続対策として生前贈与を実行する場合には、ただ単に財産を移動させるのではなく、きちんと贈与を成立させ、さらに、将来の税務調査できちんと疎明できるようにしておくことが重要なのですが、その生前贈与を実行する際にコストや手間がかかることがあります。
そのコストや手間がかからず移動できるのが「現金(現預金)」です。
しかし、現預金の贈与にも、そのご本人の今後の生活に支障をきたしたり、相続税申告の時に納税資金の不足を生じさせてしまうというリスク(デメリット)を発生させてしまう可能性があります。
「相続税がかからないように」と生前にどんどん現預金を贈与してしまうと、その方に大きなお金が必要になった時に、推定相続人の方のお財布から出す、というようなことになる可能性があります(せっかく贈与をしてもらっても、またお金を返すような感じです)。
また、例えば「遺言で長男Aさんに不動産をたくさん相続させるから、二男Bさんには現預金を相続させよう」と考えた場合、長男Aさんに自己資金がないと、相続税の申告の際に、長男Aさんは、不動産をたくさん相続できても、相続税が納付できない、というようなことが起こる可能性があります(二男Bさんはもらった現預金の中から払えるでしょう)。
想う相続税理士