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相続税の税理士報酬の損得勘定を教えます

相続税の税理士報酬の決め方はバラバラ

相続があった場合、財産が一定額以上あれば、相続税の申告をしなければいけません。

自分で申告しない場合には、税理士に依頼することになりますが、どれくらいの税理士報酬や費用が発生するか、不安になる方もおられると思います。

相続税の税理士報酬は、各税理士事務所ごとに金額を定めていますので、一律ではありません。

その個々の税理士事務所の相続税に対する考え方が、そこに影響します。

相続税の申告を依頼するお客様の側にとっては、「なぜ金額に違いがあるのか?」「その金額は適正なの?」というお悩みポイントがあるのではないでしょうか?

「相続税の税理士資格」はない

相続税の申告は、どの税理士事務所も同じように取り組んでいるかというと、そうではない、というところにも注意していただかなければなりません。

よく、医者に専門があるのと同じだ、というように言われることもあるのですが、内科を標榜している医者もいれば、外科を標榜している医者もいます。

内科の医師免許、外科の医師免許がそれぞれある訳ではありません。

同様に、税理士についても、「相続税の税理士資格」「法人税の税理士資格」がある訳ではなく、税理士資格あれば、相続税の申告書も作れますし、法人税の申告書も作れるということになります。

ですから、医者だからといってみんな外科手術ができるかといえばそうではないのと同じように、税理士だからといって相続税の申告が必ずしもできる、得意だ、という訳ではないということです。

相続税の税理士報酬の決定方法

相続税申告の報酬については、「財産の金額の1%」というのがひとつの目安になります。

財産の金額をベースにするのは、一般的に財産の金額が大きくなればなるほど、色々な財産の評価が必要になることが多いため、手間や時間もかかり、それに比例して報酬が高くなる(報酬を高くする)、という考え方が根底にあるものと思われます。

単純に「財産の金額の何%」という基準にした場合には、財産の金額が非常に大きい場合に、それに比例して報酬もかなり大きく膨らんでしまうため、一律に増えていくのではなく、ある程度なだらかに増えていくように調整している税理士事務所が多いように思われます。

結果的には、財産の金額の0.5%から1.0%の間になるように設定している税理士事務所が多いです。

また、この場合の「財産の金額」は、土地などの評価については特例を受ける前の金額、そして、借入金や葬式費用などを控除する前の金額で計算する税理士務所がほとんどです。

相続税は、プラスの財産の金額から借入金や葬式費用の金額を控除した、「正味の財産の金額」に対して相続税を計算しますが、いくら相続税の対象が正味の財産の金額だからとはいえ、プラスの財産はプラスの財産できちんと評価しなければならず、そこには手間と時間がかかるため、プラスの財産の金額をベースに報酬を計算する、という考え方になります。

とはいえ、財産の金額が大きくなくても、その財産の構成によって手間や時間がかかる場合もありますので、その財産の金額に応じた報酬以外に、土地や同族会社の株式等を評価した場合には、それぞれ、一つの土地、または、一社あたりいくら、というように決める場合もあります。

一般的な相続税の申告報酬の計算のしくみについてお話ししましたが、報酬についてはまだ問題点が2つほどあります。

問題点1:相続税の税理士報酬の基準が秘密にされる

1つは、報酬基準をオープンにしていない税理士事務所もあるということです。

ただし、これは一概に悪いとは言えません。

なぜなら、例えば、財産の金額だけで報酬基準を作ってしまうと、市街化区域に小さな土地がたーくさんあるような相続の依頼があった場合に、全体の財産の金額はそれほど大きくないにもかかわらず、多くの土地の評価をしなければならないために、手間や時間がかかってしまう、というようなことも考えられるからです。

明示された報酬基準により計算した金額よりも、最終的に請求する金額が、財産を実際に評価してみてかかった手間や時間を考慮することにより、高くなってしまえば、その依頼された方は「話が違う!」と怒るでしょう。

いくら手間がかかった、時間がかかったということを誠意をもって税理士事務所側が説明したとしても、相続税の計算や財産の評価にどれだけ手間や時間がかかるか、というのは、お客様には分かりません。

であれば、財産の内容をきちんと見てから、この相続ではこのような財産の構成でこれぐらいの評価の手間がかかるので、これぐらいになります、とお伝えした方が、後々問題になりません。

とはいえ、報酬基準がオープンでないということが、依頼する側にとって、大きな障壁になっていることは間違いありません。

問題点2:相続税の税理士報酬は値段だけで判断してはいけない

もう1つの問題は、報酬が安ければ安いほど良いかというと、そうではないということです。

これは、相続税の申告だけではなく、会社や個人事業主の税務顧問の場合にも当てはまると思います。

各税理士事務所で提供されるサービス(税務顧問や申告書作成)は一律ではありません。

個々の税理士事務所が、まったく同じ種類の「車」「テレビ」を売っているのであれば、どこで買っても同じ車やテレビが手に入るのですから、安い方がいいに決まっています。

しかし、相続税の申告は、その相続財産の把握の仕方や、財産の評価方法において、税理士によって差が出てしまう事情があります。

なぜなら、例えば、夫婦のお金が混ざってしまっているような場合、どこまでが亡くなった方の財産かということについて明確な規定などはありませんし、財産の評価方法についても、一律の決まりはあるにはあるものの、それらの決まりをどう適用して評価するか等の判断には、個々の税理士の判断が絡んできます。

当然、そこでは経験や知識による判断の違いというものも出てきます。

「そうは言ってもそんなに相続税や財産の金額に差が出ないのではないか?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

私がお手伝いした相続でも、二次相続の申告をやらせていただいたのですが、一次相続の時の話をお伺いしたら、重加算税が課税されて配偶者の税額軽減が受けられず、かなりの相続税を払うはめになった、と怒ってらっしゃいました。

ちょっとした税務判断の差が、重加算税につながってしまえば、納税額は大きく変わります。

どういった経緯でその一次相続の申告書が作られたかは、私には分かりませんが、税理士がこれで大丈夫といえば、依頼した方はそれでいいのだろうと思ってしまいます。

しかし、実際には、結果的に財産を全部申告しなかったことにより、ペナルティの税金を払うことに加え、通常は相続税がゼロにもなることがある配偶者の税額軽減という特例を受けられなかったことにより、本税についてもかなり大きな金額の追加納税が発生してしまった、ということです。

みんな「バレない」と思って失敗する

相続税については、税務調査の入る割合が、他の税金よりもかなり高くなっています。

また、税務調査が入った場合には、納税者側に非常に不利な状態での対応となります。

なぜなら、税務署は既に生前の財産やお金の動きについて細かく調べてからやって来るからです。

申告した納税者側よりも、生前の財産やお金の動きについて、詳しく知っています。

亡くなった方が毎年確定申告をしていたり、会社等から給与をもらっていたりすれば、そのデータも蓄積されていますから、どれくらいの現金収入があったのかということは完全に把握されています。

その上、これぐらいの財産があるはずだ、という予想も立てています。

税務署には、その調査の対象となった方のデータだけではなく、他の納税者のデータ(同じような所得や収入の方のデータ)も(過去の分も含めて)沢山蓄積されているからです。

「どうせうちのことは分からないだろう」という考えは危険です。

お話したように、給与や事業の収入は、申告した相手ですから、当然把握されていますし、不動産や預貯金の動きは当然のこと、高額な資産の購入についても、その購入先の税務調査による情報収集等により、購入内容が把握されていることもあります。

ですから、税務調査を意識した、税務署による申告書のチェックを意識した申告書の作成が必要となります。

相続税は税務調査官への説明が極めて大変

相続税に限りませんが、税務調査は交渉にかなり時間がかかる場合もあります。

こちらがきちんと説明したとしても、税務署はこちらと立場が違いますから、そう簡単には折れてくれません。

これが納税者の方のご自分の収入や所得についての調査であれば、その納税者の方も「こうだ」というように強く主張できるかもしれませんが、相続税は亡くなった方の財産についての申告なのです。

ですから、「こうだ」と言ったら、「あなたは亡くなった方ではないのに、何でそこまで言い切れるんですか?」と返されることもあります。

こちら側の主張も推測に過ぎざるを得ない場合がある訳です。

そこはやはり丁寧に申告書を作り、そして万が一、税務調査になった場合にも、丁寧な説明ができるよう、準備をしておかなければなりません。

「調査が入ったらちゃんと説明しよう」ではダメです。

申告書自体がきちんとしていなければ、いくら税務調査できちんと対応しても、うまく乗り切れません。

どうせ相続税の税理士報酬を払うなら

亡くなった方がどのように財産を形成してきたかというのは、親族でも100%わかる訳ではありません。

ですから、どれだけ一生懸命調べて申告したとしても、財産がもれてしまう場合はあります。

しかし、相続税の申告を適当にやって多額のペナルティーの税金や追加の本税が発生するのと、手間はかかったけれどもこれだけ調べた、検討したと、という申告書を出して、税務調査が来てもきちんと対応できた、という場合の申告では、税理士報酬を支払うことへの納得感というのはかなり違ってくるのではないでしょうか。

申告する金額が、ある程度の金額になれば、税務調査で焦点となる財産の金額も大きくなりますので、修正申告になった場合の本税等の追加負担のリスクが大きくなります。

税理士報酬が安かったとしても、税務調査により時間が取られたり、追加でまたいろいろと調べたりしなければならなくなったり、精神的にきつくなったりすることを考えれば、それが本当に得なのかということはよく考えた方がいいのかもしれません。

とはいえ、税務調査で修正申告になったからといって、その税理士が手を抜いていたかというと、そういう訳ではないと思います。

相続税の申告は件数自体が少ないため、なかなか税理士自体も経験やノウハウが蓄積しづらいという側面があります。

医者でも内科や外科という得意分野、専門分野があり、それぞれその診療科目で診察しているのをご覧いただければお分かりのように、相続税の申告を業務として行っている税理士に依頼した方がよいと思います。