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最初の相続時精算課税による贈与が基礎控除額以下である場合の注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、令和6年以後に初めて相続時精算課税による贈与を受け、その贈与額が創設された基礎控除額以下である場合の注意点について、お話します。


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基礎控除額以下の相続時精算課税贈与は申告不要

令和6年以後に2人以上から相続時精算課税贈与を受ける場合の注意点

上記の記事でお話したとおり、相続時精算課税による贈与には、2,500万円の特別控除額が元々あるのですが、令和6年分以後の贈与からは、この特別控除額を適用する前に、110万円の基礎控除額を適用することができるようになりました。

相続時精算課税による贈与額(贈与税の課税価格)が、この基礎控除額110万円以下である場合には、贈与税の申告をする必要はありません。

相続税法(一部抜粋加工)
第28条 贈与税の申告書
贈与により財産を取得した者は、当該財産が第21条の9(相続時精算課税の選択)第3項の規定の適用を受けるものである場合(第21条の11の2(相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除)第1項の規定による控除後の贈与税の課税価格がある場合に限る。)には、その年の翌年2月1日から3月15日までに、課税価格、贈与税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

基礎控除額を控除した残額がなければ(つまり、贈与額が基礎控除額以下であれば)、贈与税の申告書を提出する必要はないのです。

相続時精算課税選択届出書はどうやって提出する?

しかし、この場合に提出する必要がないのは「贈与税の申告書」であり、相続時精算課税を選択するために必要な「相続時精算課税選択届出書」は提出しなければなりません。

従来は、「相続時精算課税選択届出書の提出は、贈与をした者ごとに、申告書に添付して納税地の所轄税務署長にしなければならない」(相続税法施行令(最終改正日:令和03年08月06日) 第5条 相続時精算課税選択届出書の提出 一部抜粋)とされていました。

贈与税の申告書を添付しない場合、どのように相続時精算課税選択届出書を提出すればよいのでしょうか?

上記の相続税法施行令は、「相続時精算課税選択届出書の提出は、贈与をした者ごとに、納税地の所轄税務署長にしなければならない。この場合において、法第28条(贈与税の申告書)第1項の規定による申告書を提出するときは、相続時精算課税選択届出書の提出は、当該申告書に添付してしなければならない」(相続税法施行令(最終改正日:令和05年03月31日) 第5条 相続時精算課税選択届出書の提出 一部抜粋加工)と改正されました。

つまり、相続時精算課税選択届出書を単独で提出することができるようになったのです。

この場合には、その提出する相続時精算課税選択届出書に、贈与税の申告書を提出しない旨を記載する必要があります。

相続税法(一部抜粋加工)
第21条の9 相続時精算課税の選択
2 前項の規定の適用を受けようとする者は、政令で定めるところにより、第28条(贈与税の申告書)第1項の期間内に前項に規定する贈与をした者からのその年中における贈与により取得した財産について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

相続税法施行規則(一部抜粋加工)
第10条 相続時精算課税選択届出書の記載事項
法第21条の9第2項に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
四 法第28条第1項の規定による申告書を提出しない場合には、その旨

相続時精算課税選択届出書を提出しなかったらどうなる?

相続時精算課税選択届出書を提出しなければ、その贈与は暦年課税による贈与として取扱われます。

そうすると、例えば、父からの贈与110万円・母からの贈与110万円について、暦年課税贈与の基礎控除額110万円・相続時精算課税贈与の基礎控除額110万円を両取り適用(合計220万円非課税適用)しようとしていた場合、どちらも暦年課税贈与として取扱われることになることから、暦年課税贈与の基礎控除額110万円を突破して、贈与税が発生してしまいます(両取り適用失敗)。

また、相続時精算課税贈与に係る基礎控除額は、贈与税も相続税もかからない「絶対的非課税枠」としての性格を有しますが、暦年課税贈与に係る基礎控除額は、その贈与時期が生前贈与加算対象期間(相続開始前3年、順次延長されて7年)に該当すると、相続税の課税対象になる可能性があります。

想う相続税理士

上記の「相続税の課税対象になる可能性があります」という表現における「課税対象にならない」ケースは、その相続で財産を取得しない場合です。