【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

小規模宅地等の特例は配偶者以外の方が取得した土地に適用した方がいい場合がある

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税申告における小規模宅地等の特例の適用において、適用を受けることができる土地が複数ある場合の「選択」について、お話します。


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面積制限がある小規模宅地等の特例

相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。

この特例には、複数の適用パターンがあるのですが、適用できる面積に限度があります。

A土地もB土地も、特例の適用を受けるための要件を満たしていたとしても、面積によっては、適用を受けられない部分が出てくるのです。

単価が高い土地に適用した方が相続税は安くなる

仮に、A土地が200㎡で評価額2億円、B土地が500㎡で評価額4億円だとします。

1㎡当たりの単価(評価額)を計算すると、

A土地:2億円/200㎡=100万円
B土地4億円/500㎡=80万円
です。

小規模宅地等の特例の限度は、金額(評価額)ではなく面積で計算します。

この場合、限度面積が200㎡・評価減割合が50%だとすると、

A土地に適用した場合
2億円×200㎡/200㎡×50%=1億円

B土地に適用した場合
4億円×200㎡/500㎡×50%=8,000万円

を、相続税の課税対象から減額することができます。

A土地に適用した方が、減額できる金額が大きいですから、全体の相続税も安くなります。

土地の単価が高い方に適用した方が有利になる、ということです。

配偶者が相続税がゼロになる場合は?

相続財産がA土地・B土地のみ、相続人が妻・長男のみ、というケースで、A土地を妻が取得、B土地を長男が取得したとすると、

パターン1:A土地に小規模宅地等の特例を適用した場合

①A土地(2億円△1億円)+B土地(4億円)=5億円
②相続税の総額:1億5,210万円
③配偶者の相続税:③×課税ベースでの配偶者の財産取得割合(20%)=3,042万円
→相続税ゼロ
④長男の相続税:③×課税ベースでの長男の財産取得割合(80%)=1億2,168万円

パターン2:B土地に小規模宅地等の特例を適用した場合

①A土地(2億円)+B土地(4億円△8,000万円)=5億2,000万円
②相続税の総額:1億6,110万円
③配偶者の相続税:③×課税ベースでの配偶者の財産取得割合(約38%)=約6,200万円
→相続税ゼロ
④長男の相続税:③×課税ベースでの長男の財産取得割合(約62%)=約9,900万円

となります。

各相続人の相続税を計算する元となる相続税の総額ベースでは、単価の高いA土地に適用した方が安くなるのですが、実際の納付額の計算においては、

  1. その相続税の総額を財産の取得割合で取得者毎に配分
  2. 配分後の配偶者の相続税については配偶者の税額軽減を適用

という流れになります。

②においては、1億6,000万円までは無税、1億6,000万円を超える場合でも、法定相続分(上記の場合には1/2)相当額までは無税ですから、パターン1・2共に1/2以下(20%・約38%)であるため、全額無税になります。

それに対して、長男の相続税は配偶者の税額軽減の適用が受けられませんから、その配分後の金額を納税することになりますが、「長男が取得したB土地に小規模宅地等の特例を適用することで長男取得の財産の金額が減り、長男の財産取得割合が下がるため、相続税も減る」ということになります。

想う相続税理士

単価だけを考えず、きちんとシミュレーションしてみましょう!