相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における小規模宅地等の特例の適用要件について、お話します。
ご遺族の生活基盤になる土地は相続税が安くなる
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を一定の面積まで80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
適用パターンとしては、「①特定事業用宅地等」「②特定同族会社事業用宅地等」「③特定居住用宅地等」「④貸付事業用宅地等」があります。
この中でも、亡くなった方のご自宅の敷地について「③特定居住用宅地等」の適用を受けるケースが多いものと思われます。
亡くなった方のご自宅の敷地の面積が330㎡以下で、その評価額が1,000万円だとします。
この場合、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用することができれば、800万円(=1,000万円×80%)減額して申告することができますので、1,000万円の評価額でも200万円(=1,000万円△800万円)の評価額で相続税を計算することができます。
小規模宅地等の特例の適用は申告することも要件
小規模宅地等の特例は、そのパターンごとに要件があるのですが、「相続税の申告をすること」も要件となっています。
「小規模宅地等の特例を使えば相続税がゼロになる」→「相続税がゼロだから申告する必要はない」
と考えるのは間違いです。
申告したら絶対に大丈夫という訳ではない!
小規模宅地等の特例の適用には、そのパターンに応じて、「所有継続要件」・「居住継続要件」・「事業継続要件」等が課せられます。
その「継続」とは、「相続税の申告期限までの継続」です。
相続が発生し、その相続税の申告期限が令和7年10月31日だとします。
その相続税の申告書を、令和7年8月31日に税務署に提出したとします。
添付書類も完備しているし、小規模宅地等の特例に関する付表の記載もバッチリです。
取得者等の要件も満たしています。
じゃあ絶対に小規模宅地等の特例が適用できるか、というと、そんなことはありません。
上記の「継続」が、「相続税の申告書の提出日までの継続」だったら、8月31日時点で、小規模宅地等の特例の適用は絶対にOK、ということもあるでしょう。
しかし、この「継続」は、上記でもお話したとおり「相続税の申告期限(上記の事例の場合には令和7年10月31日)までの継続」です。
所有継続要件が課されているパターンの場合に、9月になって「今すぐ売ってくれるなら土地を高く買う」という人が現れて、その話に乗って申告期限前に売却してしまうと、小規模宅地等の特例は適用できないのです。
想う相続税理士